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      響け、博士の力/スクウェア・エニックス里井大輝さん「言葉で知識のバトンを渡す力」

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      ※本記事は2020年夏号「incu・be」vol.49に掲載されたものです

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      株式会社スクウェア・エニックス テクノロジー推進部AIリサーチャー 里井大輝さん
      株式会社スクウェア・エニックス テクノロジー推進部AIリサーチャー 里井大輝さん/筑波大学大学院 システム情報工学研究科知能機能システム専攻にて博士号を取得後、株式会社スクウェア・エニックス テクノロジー推進部にAI リサーチャーとして入社。研究テーマはゲームAI。

      みなさんは「おもしろいゲームの定義を答えなさい」と質問されたら、どう回答しますか?デバイスの進化や人の価値観の多様化に伴い、ここ10年でゲームの捉え方は大きく変化し、その楽しみ方も多様化しています。

      私はいま、誰もがワクワクし続けられるゲームを開発するために、プレイヤーの腕前やゲーム内での動きから、プレイヤーの感情が揺さぶられるゲーム展開をその場で設計できるメタAIの技術を研究しています。

      もともと高専の出身で「技術を磨き、誰もが喜んでくれるような『ものづくり』を行いたい」という想いから、大学院での研究をスタートさせました。ところが1つの疑問が湧いたのです。

      「ものづくり」と「研究」の違いは何なのか?

      博士の研究者という立場にあったにもかかわらず、答えを見つけられないもどかしさに苦しみました。指導教員から「なぜその方法を使う必要があるのか」「この研究はどんな点において新規性があるのか」と質問されても上手く言葉にすることができず、数か月もかけて論文を書き直しました。

      この時期に私は、自分の研究の必要性や新しさについて根拠を示して言語化することが、できていなかったのです。この経験から、研究では言語化が一番難しく、かつ、重要であることを実感しました。

      自分の想いや考え方が他の人にも伝わる言葉にできるようになったとき、企業との共同研究や、後輩との研究が格段に前に進みやすくなりました。言葉にして、自分の研究の先を創る人たちが使える論文の形で公表することが、ものづくりと研究の違いなのだと思います。言葉を通じて、自分の次の研究を創る仲間に知識のバトンを渡す、これこそが研究者の力であると思いました。

      私がスクウェア・エニックスに入社したのも、自分たちの研究を積極的に公表するチームに魅力を感じたからです。

      ゲームの世界への研究者の進出は意外かもしれませんが、じつは研究しがいのあるテーマがたくさん眠っています。たとえば、苦労した結果の達成感をどう実現するか。こうした魅力的な研究テーマを発掘するには、コンピュータ・サイエンスはもちろん、心理学・認知科学など、さまざまな分野の研究者が集まり、お互いの知識を言葉で共有していくことが大切です。

      この新しい世界をともに探検する研究者の仲間が増えたらいいなと思います。誰もがワクワクする、夢のようなゲームのピースを探す旅に出かけませんか。

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