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      リバネス研究費50回記念特集・意志ある一歩を飛躍につなげるリバネス研究費

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      リバネス研究費は、自らの研究に情熱を燃やす若手研究者を支援するグラントです。80 社を超える企業とともに設置し、今回で50 回目を迎えます。これまで、研究者はどのような想いで応募し、その経験を後の研究人生にどう活かしていったのでしょうか?当時学生だった採択者の体験談をもとに、応募という一歩をきっかけとした若手研究者の飛躍の軌跡と、リバネス研究費がどのようにその背中を押してきたのかを紐解きます。 ※本記事は2020年秋号「incu・be」vol.50に掲載されたものです

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      歴代採択者に聞く!リバネス研究費の使い倒し方

      今回第50回を迎えるリバネス研究費。採択された若手研究者はのべ304人に上ります。応募した先輩たちは、どのようにこの研究費を活用したのでしょうか? リバネス研究費をフル活用している歴代採択者9名の方に、応募の理由と使い倒し方を聞きました。

      調査に協力してくれた皆さん/飯塚 怜さん(第17回オンチップ・バイオテクノロジーズ賞、第21回エンバイオ賞)、今清水 正彦さん(第1回リバネス賞)、今村 公紀さん(第18回ライフテクノロジージャパン賞、第24回オンチップ・バイオテクノロジーズ賞、第29回SCREENホールディングス賞、第36回L-RAD賞)、事崎 由佳さん(第2回リバネス賞、第6回トライアングル賞)、小南 友里さん(第28回𠮷野家賞)、田中宗さん(第18回ディスカヴァー・トゥエンティワン賞)、戸森 央貴さん(第16回ナブテスコ賞)、乘本 裕明さん(第14回ディスカヴァー・トゥエンティワン賞 奨励賞、第29回レイコップ Good Sleep賞)、正木 郁太郎さん(第29回ENERGIZE賞、第36回超異分野教育賞)

      Topic1 なぜリバネス研究費に応募したのですか?

      <研究室の先生や先輩に勧められて>
      ・博士課程の頃、指導教員からの紹介で知った。研究費を自分で取ってくる経験を積んでみたかった。
      ・自分のテーマが研究室内でなかなか評価されなかった頃、先輩が申請を勧めてくれた。

      <研究資金が欲しい>
      ・当時は他の助成金が全く取れておらず、申請できる先を手当たり次第に探していた。
      ・自由度の高い研究費を探していた。リバネス研究費はその先駆けだった。

      <自分の新しいテーマを立ち上げたい>
      ・新しい研究室に移って2年目の頃。自分のやりたい研究テーマに特化した予算がほしかった。
      ・科研費ではお金がつきにくい、社会課題をベースにした研究に挑戦したかった。

      <企業とのつながりを持ちたい>
      ・企業の技術や装置が使えれば、研究をより加速できると考えた。
      ・リバネス研究費はいわば設置企業とタッグを組んで進めるプロジェクト。共同研究の提案として申請書を書いた。

      Topic2 採択によってどんなことが得られましたか?

      <研究者としての自信につながった>
      ・自分で書いた申請が通った、という事実が自信になった。
      ・非専門分野の人に自分の研究を伝える自信がつき、積極性が生まれた。端的にいうと一皮むけた。

      <申請書を書く力がついた>
      ・何度も繰り返し申請する中で、申請書を書く力を養うことができた。
      ・どうやったら審査員に読んでもらえるか試行錯誤したことで、科研費の申請書も書きやすくなった。

      <異分野との掛け合わせを考える力がついた>
      ・自分のテーマを広義に捉え、異分野と掛け合わせた時に何ができるかを考えるようになった。

      <新規テーマを開始できた>
      ・新しい研究テーマを始めるための探索的な調査を行うのに、50万円という予算がちょうど良かった。
      ・問題の種と切り口、研究モデルのプロトタイプができた。

      <次の研究費を取るきっかけになった>
      ・リバネス研究費での研究実績を元に、科研費や財団の助成金に申請できるようになった。
      ・次のポストを探すときに、履歴書の業績欄を書くのに役立った。

      <企業との共同研究や交流ができた>
      ・企業との共同研究に発展した。
      ・お金だけでなく、企業との人的交流ができたことが収穫だった。現在も相互交流が続いている。

      先輩たちの声から、リバネス研究費は単に研究資金が手に入るだけでなく、研究者としての考え方の成長や、企業との接点をもたらす機会でもあることが見えてきました。次に、リバネス研究費をきっかけに大きく飛躍した、2人の先輩研究者を紹介します!

      (1)東京大学大学院 特任助教 小南友里さん「企業と連携したから見えた、産業界の現場感」

      東京大学大学院 農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻 水圏生命科学講座 特任助教 小南友里さん/第28回リバネス研究費・𠮷野家賞「解凍方法の最適化に向けたタンパク質分解の解析」 採択当時:博士課程2 年

      アカデミアと現場の乖離を感じて

      アカデミアの研究で食品産業の現場を忠実に再現するのは、どうしても限界がある。たとえば、 食品の流通・加工の現場からサンプリングされた試料を直接入手することは大変困難であるため、大学で扱う研究用試料は現実の状態とは異なる擬似的なものになりがちなのだ。 当時博士課程に在籍していた小南さんは、現場の実態とアカデミアの研究の乖離に課題感を感じつつも、仕方がないとどこかで受け入れてしまっていた。

      社会に応用できるリアルな研究がしたい

      しかし、𠮷野家と連携してからその想いは変わっていく。採択テーマは「解凍方法の最適化に 向けたタンパク質分解の解析」。修士の頃から興味があった食品解凍の課題に、当時使っていたタンパク質解析のアプローチで挑んだものだ。連携により、現場のサンプルを扱えた意義は大きかったという。

      「実際に𠮷野家の工場で処理された牛肉をサンプルとしていただいたのですが、こうしたものは通常では研究用に1kgなど少量だけを入手することができません。自分では絶対手に入れられない、本当にいいものを頂いたなと思いました」

      現場で現実の流れの中から抽出された本物を扱えるからこそ、再現性の高い研究ができる。この経験を通して、せっかくならリアリティのある研究をしたいと感じるようになった。

      「現場の視点」でモノを見るように

      小南さんが𠮷野家賞に申請したのは、「自由に使える研究費がほしい」という理由からだった。だが、採択を通じて研究費だけでなく、現場のモノを現場に近いプロセスで扱い、実社会により意味のある研究を進めるために必要な視点が得られたという。現在の小南さんは、共同研究の際、相手の常識や暗黙の了解についても考えを巡らせることを忘れない。

      「実際の場所に行けなくても、さまざまな視点で細かいことを聞くようになったと思います」

      その気配りの徹底ぶりは、実際の作業工程から冷蔵庫の温度の違いにまで至る。リバネス研究費は、企業とアカデミアの壁を越えたひとつ高い視座を得るきっかけとなったといえるだろう。

      (2)マックス・プランク脳科学研究所 研究員 乘本裕明さん「自分の仮説を専門分野の外に問い、研究の芯を確立する」

      マックス・プランク脳科学研究所 研究員 乘本裕明さん/第14回リバネス研究費ディスカヴァー・トゥエンティワン賞「新奇感覚の創成」 採択当時:博士課程1 年

      独自の視点で睡眠の研究に臨む

      乘本さんは現在、ドイツのマックス・プランク脳科学研究所で、全生物共通の普遍的な睡眠のメ カニズムがこの世に存在するのかどうかを調べるために、トカゲを用いた研究をしている。

      マウスやラットを使った実験をする人が多い中、レム睡眠─ノンレム睡眠の規則性がはっきりしているトカゲを選んだところに、既成概念に縛られない乘本さんの研究スタイルが現れている。

      大学院生時代から睡眠の研究にのめりこみ、独自の視点をもって研究に臨んできた乘本さんだが、その大きなきっかけはリバネス研究費にあった。

      独創性という諸刃の剣

      自分で研究アイデアを膨らませて進めようとした研究の1つに、大学院生時に着想した脳への 新奇感覚の付与がある。

      「たとえば人間は磁場を知覚できませんが、通常知覚できない情報をセンサーを使って脳に入力できれば、新たな感覚の獲得と脳機能の拡張につながるのではないかと考えました」

      しかし、脳機能の解明が主軸になっている研究室の中で、乘本さんが考えたテーマはメンバーの関心とは合わず、研究の意義に耳が傾けられることはほとんどなかった。はじめは自信満々で挑んでいた乘本さんだったが、次第に自信を失い、研究に向かう気持ちもなくなってしまっていた。

      専門外からの評価が、研究人生を変える

      そのような時期に、このテーマを唯一面白いと言ってくれていた先輩から「乘本の研究が面白い のかどうか、研究室外の人に問うてみたら」と紹介されたのがリバネス研究費だった。

      応募した賞は、脳研究とは全く関連のない分野の審査員が評価する賞。乘本さんは「ここでも評価されなかったら研究をやめよう」という強い覚悟で応募した。その結果は奨励賞だった。助成金は出なかったが、自分の研究内容が評価されたことが乘本さんにとって大きな自信につながった。

      「自分が面白いと思うテーマをどんどん進めて良いんだと気づき、研究に臨む自分の芯を確立することができました」

      まだ研究を初めて間もない大学院生であれば、自分が強くやってみたいと思う研究や信じる仮説があっても、それに取り組む機会をなかなか得られないこともある。リバネス研究費は、学生が自らの仮説を外に問い、自力で検証する第一歩となるだろう。

      <情熱ある大学生・大学院生に最大50万円を提供する!リバネス研究費の原点>

      いまやリバネス研究費は、世界的な業績を上げる研究者や社会課題の解決を目指すアントレプレナーといった、最先端を駆ける若手の登竜門となっている。12年前に始まったこのプロジェクトの原点は「研究を続けられない仲間の窮状を何とかしたい」という想いにあった。リバネス代表の丸にその原点を聞いた。

      株式会社リバネス 代表取締役グループCEO 丸幸弘

      「自分の研究に熱い思い入れのある人が研究できない」。2008年末のこと、私たち創業メンバーの友人のポスドクが、プロジェクト予算の関係で半年間の収入が得られなくなってしまったのです。我々は将来有望な若手ですら研究を続けることが困難になる日本の現状を見過ごすことができませんでした。

      そこで、今の代表の1人である髙橋修一郎の発案で、日本で初めてのアクティブな若手研究者を応援する研究助成金を立ち上げることにしました。リバネス研究費の誕生です。

      ありとあらゆる分野からアイデアを募集し、特にその情熱を応援したい7名を採択しました。その1人は先に挙げた友人のポスドクです。彼は採択後にアメリカで研究のチャンスを得て、今は産業技術総合研究所で多くの論文を書き、今年6月に開催された超異分野学会関西フォーラムでは最優秀ポスター賞を受賞しました。

      また、当時お茶の水女子大学の准教授だった瀬々潤さんは、採択をきっかけに産業界での研究開発の可能性に気づき、研究機関に所属しながら、アカデミアと産業をつなぐベンチャー企業を立ち上げました。こうした若手研究者に期待をかけて、今では80社以上の企業がこのリバネス研究費の取り組みに参加してくれるようになり、採択された研究者数は304名、助成総額は1億円を超えました。

      自分がこれはと思うテーマに向けて自力で研究費を手に入れ、自らの意志で前に進める。そうした野心をもつ人が一歩を踏み出せれば、結果的に新しいつながりを得て独創的な挑戦を生み出し、活躍の場を広げることができるはずです。

      目標を見つけ、それに向かって実力を養い、自らの未来を創り出す若手研究者を応援したいという想いを出発点に、私たちが『incu・be』を創刊したのは2006年のことです。継続は力であると信じ、『incu・be』100号、100回目のリバネス研究費に向けて私たちも挑戦を続けていきます。

      <リバネス研究費の登録および採択情報はこちらから>
      https://r.lne.st/grants/

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